人間、多くの人は自分以外の誰かと比べられるのは嫌なもの。
学年一の人気者、秋山璃在(あきやまりある)と5年生のクラス替えで同じクラスになった飛鳥井渡(あすかいわたる)は、フクザツだった。
リアルと渡は、幼馴染。
なんでもできる人気者のリアルと比べられるのを渡はいやだった。
そして、何よりリアルとの勝ち負けを考える自分自身を渡はきらいになっていた。
リアルと渡、2人の前に転校生サジが現れる。
渡の抱える劣等感、リアルの抱える過去、サジの抱える葛藤。
少しずつ違う3人が互いに支えあいながら、忘れられない夏を過ごす友情物語。
『ぼくたちのリアル』は、児童書ですが、大人が読んでも考えさせられる話です。
大人対大人であっても、子ども対子どもであっても、大人対子どもであっても、人は表面から得られる情報に敏感です。
簡単に得られる情報から、人は人を判断しがちになります。
私もそうです。
リアルや渡のまわりにいる大人は、子どもを表面だけの振る舞いで見ていないように感じます。
子どもの見えない部分とも向き合い、大事なときに逃げません。
リアル、渡、サジの3人は、おそらく無意識のうちに、お互いを補い合い、表面には出さない自分をさらけ出すことのできる関係を築き上げています。
何より、リアルと母親との関係が切なく、胸が苦しくなります。
しかし、リアルには、渡とサジがいました。
リアルと母親の新しい関係をつくっていくきっかけは、渡とサジがいなければできなかったことでしょう。
簡単にできることではないけれど、人と向き合うときに忘れてはいけないことを思い出させてくれた一冊です。
『ぼくたちのリアル』
・第56回講談社児童文学新人賞
・第46回日本児童文芸家協会児童文芸新人賞
・第63回青少年読書感想文全国コンクール課題図書
・全国学校図書館協議会選定図書