『いい人ランキング』吉野万理子(著)「いい人」でいれば安全だと思っていた

木佐貫桃は、本当にいい人だ。

『いい人ランキング』は、簡単に言えば、いじめを題材にした児童書です。
クラスの空気が変わったことに気づいてしまった桃は、妹の鞠が「師匠」とあがめる尾島圭機に助けを求めます。

クラスは一見いい方向へいきますが、読んだ後は、なんだか苦しさの残る話です。
テーマがいじめだから、後味が悪いのは当然かもしれませんが。

人は、安全な場所に自分を置くために、ほかの誰かを犠牲にすることがあります。
一度、誰かを犠牲にしてしまうと、終わりのない鬼ごっこのようにつづいていきます。

学校の環境や教師の言動で、多々ひっかかりのある『いい人ランキング』ですが、多々のひっかかりを忘れてしまうほどに、尾島圭機の言動が切なくなります。

人との関係を悟り、自分を徹底的にだまして演じていくことは、中学2年生では無理だろうと思うのですが、もしかしたら、人は、想像を超える体験をすると年齢に関係なく変われるのかもしれない、とも思いました。

自らを「ホワイトライオン」と圭機は言います。
ホワイトライオンであり続けることは、苦しいことだと思ったけれど、
「ホワイトライオンだ」と言える相手がいたことは、圭機にとって救いなのではないかとも考えました。

いじめ問題は、子どもの世界でも大人の世界でも多くあります。
『いい人ランキング』をヒントに、環境を変えずに、自分を取り巻く世界を変えることは簡単ではないと思います。
それでも、多くの人に読んでもらいたいと思った一冊です。

世界の見方が、少し変わるかもしれません。

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コメント

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